2015年6月18日木曜日

元少年A著『絶歌』について~酒鬼薔薇聖斗とカウンセリング~

神戸連続児童殺傷事件の犯人少年Aである、『酒鬼薔薇聖斗』の手記の発売についていろいろな声が上がっています。

被害者遺族に対しての配慮の至らなさや、
ある意味事件を売り物として著者に印税が入るのは如何なものか、
という意見が多いようです。
発売元の出版社である太田出版もその対応に苦慮しているようですね。

皆さんはどのように思われますか。
私個人としては、実はまだその書籍に対する立ち位置が自分の中で定まらず、目を通していないという状態です。

確かに、遺族感情を考えると今回の出版は理解に苦しみます。
そして遺族だけでなく、この事件のような強い印象を持った書籍を無自覚に読んだ人に与える影響というのも懸念します。

反面、これは私が心理に携わる仕事をしているからというのもあるのでしょうが、犯人の心情や胸の内を知ることに意味が無いとも言えないとも思います。
更には、例えば犯人の心理に対しての考察材料としてでなく、単純に事件に対する野次馬根性的な興味本位で読みたいという人に対しても、自分とは違うある意味逸脱した心理状態とはどのようなことが起きるのか、を知る切っ掛けになるのならばそれもやはり無意味ではないようにも思えます。

つまり、どのような姿勢で彼の手記に触れればよいのか。
それが曖昧なままで手に取ることに抵抗を感じているのです。

そんな中、ひとつ気になったことがありました。
手記の見出しにこのような一文が
「精神鑑定でも、医療少年院で受けたカウンセリングでも、ついに誰にも打ち明けることができず、二十年以上ものあいだ心の金庫に仕舞い込んできた」

この部分は看過して良いものではないのではないでしょうか。
彼は、医療少年院で行われた極秘の贖罪教育・矯正教育といえる「少年A更生プロジェクト」を受けて社会復帰を果たしたとされていたはずです。

しかし彼の手記からは、打ち明けることが出来ず心の奥に仕舞い込んでいたものをそのままにカウンセリングを終えていると語っているようです。
これはカウンセリングの不十分さを露呈しているように感じます。

勿論出版社の煽り文句での過大表現かもしれません。
しかし、元少年Aが本当にそう言ったのであれば、その更生プログラムに対する疑問を我々に投げかけているのではないでしょうか。

事件当時私は20代でした。この事件は心理の道に進む要因のひとつとなったと思います。たるみでした。


 ※お知らせ
教材用のカウンセリングDVD制作を計画しています。
つきまして、ボランティアでクライエント役をして頂ける方を募集しています。
興味のある方は下記宛先『名古屋 栄カウンセリング』までメールでのご連絡お待ちしています。



垂水俊輔のカウンセリングの詳細やお問い合わせはこちら
❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈
名古屋 栄カウンセリング
 URL:http://sakaecog.web.fc2.com/
 
❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈・❈